活動日記

第4回里山カフェ

2018年3月7日里山里海

3月2日に第4回里山カフェとして「里海からの発信 〜里海里山ブランドの推進に向けて〜」というタイトルで、NPO法人里海づくり研究会議 田中丈裕事務局長にお話いただきました。

 

田中さんは、もともとは岡山県庁の水産職の職員。定年を前に退職されているものの、最終の職位は水産課長というお立場で、瀬戸内海の漁業の振興と里海の再生に尽力された方。お話の中で、「漁師小屋に泊まり込んで漁に参加させてもらい、現場を勉強した」、「沖へ出て28時間船に揺られてそのまま県庁に出勤した」などの武勇伝をご披露いただくなど、県庁職員時代から現場を大切にしていることが滲みでいている方でした。

まず1時間に及ぶ講演は、そもそも『里海』とは、という定義の確認からスタートしました。「人手が加わることで生物調整と生産性が高くなった海」(九州大学 柳哲雄教授 1998)という定義は、かつての漁師も「漁業は海のおこぼれを頂戴する産業」という考え方を持っていたので親和性が高かったはずだということです。

 

しかし、近代化が進むに従って、その機能は失われ、漁獲や生態系の減少という形で現れてきました。それを食い止めるために「アマモ」に注目をして、日生町漁協の皆さんと里海の再生に取り組まれてきたわけですが、実はそれ以前にも様々な先駆的な活動が存在していました。

・五味の市(魚介類の直売施設)の開設(1967年~) →価値実現と資源管理

・海底ごみの回収(1981年~) →海底ごみ回収処理推進のための手引(環境省)

・アマモ場再生に向けた取り組み(1985年~) →アマモ場再成技術指針の策定

・カキ殻の有効利用の推進(1988年~)→海洋牧場づくり

・サワラ資源回復計画先行着手(1996年~)→瀬戸内海11府県サワラ資源回復計画

・底びき網による落ちカキの回収・販売(1996年~)→カキ養殖業と底びき網漁業の連携

・海洋牧場づくり(2002年~)→播磨灘地区水産環境整備マスタープラン

・廃カキ筏から竹炭製作(2008年~)

・備前焼への活用・チップ化(2010年~)

(田中さんのスライドより)

 

アマモは、「海のゆりかご」と呼ばれているように魚介類の産卵場・保育場として知られています。しかしそれだけでなく、水温上昇の抑制、魚介類の餌場、漁業資源のストックの場、酸素の供給と二酸化炭素の固定、赤潮の原因物質を吸収など、多様な機能を担っているとのことでした。ただ近代化の流れの中で、戦後間も無くは590haもあった日生地区のアマモ場は、一時期5ha以下にまで減少してしまいました。それを20年かけて250ha以上にまで回復させたのが、まさに「里海づくり研究会議」の取り組みになるわけです。アマモ場の回復という「言うは易し行うは難し」という取り組みを実現したのは、まずは漁組のリーダーシップがあったからこそ、ということでした。その上で、県や自治体、そしてNPOや企業、研究者が一緒になって取り組んだことが、結果につながったのだそうです。当初は19人の組合員で始めた取り組みが、20年経ってから全組合員・職員83名が参加するようになったそうです。

アマモ場を回復させる手法として、カキ殻をつかったことも日生の里海再生の特徴の一つです。岡山県はカキの生産量が全国2位で、身を抜いて出荷した後に残る「カキ殻」も大量に発生していました。それを廃棄処分のためにコストをかけるのではなく、アマモ場に撒くことでアマモの根を絡ませて流出を防ぎ、海水の濁りの原因となる浮泥の巻き上がりを抑え、コストも低くすることができたそうです。

 

さらに、教育的な効果についても言及をいただきました。

「ジャマ藻」と呼ぶ人まで出てくるくらい増えたアマモが、流れ出て船のプロペラに絡まったり、岸に打ち上げられて海辺で生活している人から苦情が出たり、という課題を子ども達と一緒に解決されたそうです。流れ出たアマモからは種子を採取できることに注目して、子供たちに「流れ藻」を採集して種子をとるという体験型の海洋学習を行ない、その成果を「全国アマモサミット」で発表し、地域と世代をつないでいくことができたということでした。

 

会場からの質問とのやりとりは次のようなものがありました。

「どのような地域経済にインパクトがあったか?」⇒牡蠣の収穫が安定した。もエビやあいごなどの漁獲が増えた(もどった)。

「後継者は増えるのか?」⇒すでに後継者がいるので、応援団を増やしたい。結構稼げる。2000万円超える人も多い。

「水産加工業は?」⇒同じ規格のものがたくさん採れる場所ではなく、少量多品種の瀬戸内海なので旬が美味しい。なので、水産加工は発展してない。だからこそ小売を頑張りたい。

「アマモ場の再生は、全国に広げられるのか?」⇒全国にアマモ場を戻そうとする取り組みをする人は多い。日生はその聖地。横展開は可能。

 

田中さんの日生の海にかける思いが、岡山県全体の海につながり、さらにその海を作る里山につながっていることも最後にお話いただきました。そして里海作りが多くの関係者(※)を巻き込んで、まちづくりにも繋がっています。参加者一同、モデルとなるような事例があることを心強く感じたとともに、自分たちのフィールドで何ができるかを考える良い機会になりました。

(※:漁協・農協・森林組合・商工会議所・商工会・観光協会・備前焼陶友会・八塔寺ふるさと村・大学・有識者・教育委員会・教育関係者・地域おこし協力隊・笹川平和財団海洋政策研究所・NPO里海づくり研究会議・備前市)

 

 

 

 

 

 

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